旅する移動図書館

 2005年の話。若干うろ覚え。



 私は旅をするときには必ず本を携帯します。
 長旅をしていれば、どうしてもどこかで空白の時間ができることがあるからです。
 それはひどい雨降りに嫌気がさした時であったり、たまにはのんびり過ごしたい時であったり、逆に素晴らしい景色に出会ってそこからしばらく動きたくない時であったり。
 同じようなことを考えてか、旅先ではやはり読書をしている人を見かけます。




 ある日ライハで本を読んでいる男性を見かけたので、声をかけてみました。何を読んでいたかは忘れたのですが、手に持っている本は自分の本ではないということです。

「他のライダーに借りたんだ。」

 しかし本を貸してくれたライダーとは一緒に旅をしているわけではなさそうです。いつ返すんですか、と尋ねたところ、こんな言葉が返ってきました。

「これはそのライダーの本でもないんだよ。」

・・・意味がわからない・・・。そこで詳しく尋ねたところ、本の出所を知ってびっくりしました。


 北海道内に、人に本を貸して回っているチャリダーがいるそうです。しかもなんと、自転車の後ろにはリアカーをつけて、そこに本をたくさん積んで!!
 行く先々で本を貸しては、貸したままで去っていくチャリダー。どうやって本を返せばいいのかと尋ねると、

「読み終わったら他のライダーに貸して欲しい。そしたら巡り巡ってそのうち自分の手元に返ってくるから。」

と答えたそうです。すごい、その根拠と自信はどこからくるんだろう・・・。
 ちなみに彼のもっている本は全て、環境問題に関する本だそうです。バイクではなく自転車という点でも、筋を通しているのかなぁと思いました。

 ・・・しかしこれ、ライダーに貸して回ってるというのは意味を含んでいるのかな、という邪推は過度なものですかね。



 彼がいつからいつまで北海道を回っていたのか、どれだけ貸し出してどれだけ戻ってきたのかは知るよしもありませんが、一度お目にかかってみたかったです。
 もし彼のものかもしれない本を持っている方がいたら、ぜひ再び北海道の大地に放ってあげてください。

 

 

 

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