基礎データ
・場所: 登山口まで市街地から車で約40分
・標高: 284m
・頂上到達目安: 麓からは約50分。中腹からは約20分
・レベル: 初級者向け+
・備考: 頂上に近づくにつれ、勾配が急になる。枝葉や倒壊した木等、行く手を阻む障害物が多い。ハブに注意。
於茂登岳で山に目覚めたので、あんなに苦しい思いをしながら性懲りもなく次の目的に選んだのは野底マーペーこと、野底岳。1人で行くのもなんなので、職場で体力のない人だけを狙い撃ちしてメンバーを選んだ。
登山道の入り口には、自分達以外にもこれから登山をする人たちが。1組はおじさん1人、もう1組は壮年夫妻と犬。犬連れて行くんだ・・・。
歩き始めてすぐにわかったのが、ここは非常に足場が悪い。
登山口の最初に行く手を阻むのは、水。地面水浸し。まともに通ると靴がぐっしょりになること請け合いなので、倒れて腐った木の上を渡り歩く。緊張の一瞬、気分は風雲!たけし城(古い)。
ここを過ぎても油断はできない。足下を掬うように待ちかまえる木の幹をまたぎ、進行を妨害する倒壊した太い木々とその枝を乗り越え、前に進む。歩みを妨害するのは倒壊した木々だけでなく、太くしなるツルや大きなヤシの葉、地面を這う巨大な根っこにむきだしの赤土の急勾配と、とにかく全てが前に進むことを邪魔し、進む気力すらも奪っていく。
・・・山登りってこんなにしんどかったっけ?気持ち的な意味で。
少し、負けた。
道途中にある大きな岩に登って腰をおろし、すぐ後ろを歩いていた登山口で一緒になったおじさんと職場の子に道を譲り、少し休んでから行くと告げて1人休憩をとった。
職場でもたくさんの人が登っているという話なのに、こんなに歩きにくい場所だとは思ってなかった。。油断してた。
あまり距離ができると追いつけなくなってしまうので、休憩もそこそこにみんなの後を追う。
そこに待ち構えていたのは、とんでもない事実。
「道が・・・・ない」
びっくりして先頭のI氏のところまで行くと、確かに人が通るべき道がない。この先が登山客に踏みしめられた後はなく、完全に道を逸脱したことにみな唖然とした。もちろん成り行きで一緒になっていたおじさんも巻き添え。
「どうする?引き返す??」
しかし誰も疑うことなく道を間違えてしまったことを考えると、道の分岐に行き着いて、そこが分岐だと気付き、正しい道を進める自信がない。それに今までの時間と労力をムダにしたくないという気持ちが強かった。
「自分がちょっと行って、道探してきますね。」
先頭を歩いていたI氏は責任を感じたらしく、木々の生い茂る道なき道を進んでいった。思わぬ休憩に内心喜んだけど、しかしこれ突っ切って行くとまた大変だ・・・。
5分ほどでI氏が戻ってきた。
「向こうに道みたいなものがあります!」
人の信用というものは一度失うと簡単には取り戻せない。
「それ、本当に道?」
「道です。」
・・・あーもう信じるしかない!!!I氏に命を託し、みな一斉に藪の中へ飛び込んだ。
ところが思っていた以上に植物の妨害が激しく視界は最悪、枝葉に帽子をひっかけられて奪われそうになるので、私は頭を前にして進んでいった。
しかも。
行けども行けども道らしい道が見えない。I氏が見てきたであろう範囲はとっくに超えてしまった。もはや完全に"山"を迷走している状態になり、ハブやわけのわからない虫やらの恐怖がちらつき始めた。
・・・あ”ぁ〜〜〜もぅもうぅ・・・くっそ、くっっっっっそ〜〜〜〜!!!!
心の中では言葉にならない叫びを上げながら無心で歩く。
「でもほら、上に向かって進んでればいつかは頂上に着くんだから!」
後ろでおじさんが心強い一言を放った、確かにそうだ。それは正しい。
その言葉を頼りに道ならぬ山を進むこと約10分。
ついに念願の登山ルートに出くわした!うあぁぁ・・・この時の喜びと言ったら・・・!!しかも出たところはほとんど頭上に枝葉がなく青空が広がっている。
もう頂上は目の前。最後の急勾配はきついが、しんどかった思いが一気に吹き飛んだ。
「つ・い・たーーーーーっ!!!」
野底マーペーの頂は巨大な岩がゴロゴロしていて、頂上とはつまり岩の上。かじりついて岩に登るとぐるっと周囲が見渡せる。まさに絶景。
「すごい!すごい!海キレイ!周り緑だらけ!断崖絶壁!!」
みな思い思いに風景を楽しみ、写真を撮る。
しばらくすると犬連れの壮年夫婦がやってきた。
よく犬連れで・・・と思ったが、夫婦より明らかに犬のほうが元気だ。
だいぶ長い時間を頂上で過ごし、夫婦とおじさんに挨拶をして山を下った。正しいルートで登っていなかったので若干の不安はあったものの、とりあえず登山ルートを下る。
「道が分かれてる・・・。」
またこれ選択を迫られるとは・・・。
『右:野底林道 左:野底小学校』
どちらに行けば最初の登山口に出られるか。
私は迷いなく左だと思った。頂上から見下ろしたとき、右側には山を途中から登るルートらしき道路が見えたからだ。恐らく右に行くと、中腹の駐車場だろう。そこから自分たちの登ってきた登山口は全く違う場所だ。
しばらく侃々諤々の議論を繰り広げたが、やはりここは汚名返上・名誉挽回のチャンスをI氏に与えるべきでは・・?
「Iさん、あなたが選んでください。どちらに行けばいいと思いますか?」
「僕は右だと思います。」
笑顔で迷うことなく右と答えたI氏。ちょと待て、その自信はどこから??
だめだ、これは軌道修正しなくては!下ってきたおじさんも合流し、再度話し合いをした結果、みなで左に行こうという結論に至ることができた。I氏・・・2度ならぬ3度までも・・・!!
帰りはひたすら山道を駆け抜け下るのみだったが、みな「どこから間違えたのか」と看板や周囲の風景を見ながら話をしていった。ある場所まで行き着くと、「ああここ通ったね」という言葉がちらほら出てきて、こちらのルートでよかったのだと1人ほっと胸をなでおろした。
だってさ、上りはいいよ。頂上は一つしかないんだからどんなに藪の中進もうが行き着くもん。でも下りで道を踏み外したら、絶対遭難するってば!
翌日職場の人にこの話をしたら、少し前に観光客が遭難したが発見されたという話を聞いた。うぅ・・・二の舞にならなくて本当によかった!!
(2009.05.10)